苦労年齢
全てを知り尽くしてしまっていた私は、上手いことこなせるようになっている。17時半、現場が終われば、ほぼエンドレスの残業だ。何時に帰れるのやら。
手順書やチェックシート作成、納品のチェックや、不良品の最終チェック、エンドユーザーや、外注先へ確認のメール、夜勤の派遣社員の出勤状況の確認など…全てこなした。
ーーーふぅ…今日帰れるのかな…ーーー
「さくらさーん!今すぐ2階事務所まで!!」
社長からの社内放送で呼び出しだ。
カメラを抱えダッシュで2階事務所に向かう。
ーーーなんなの?!行きたくないんだけど~ーーー
「さくら!手順書どこまで出来た?!」
「あっ、今ここまでで…現場に入ったりなかなか進まず、すみません。」
「お前よ~!次々派遣社員やら、パートやら入ってくるのに、おせーだろー!!」
スパンッッと、スリッパで頭を叩かれる。
「ってぇなぁ~!!!」
ついつい、カッとなると出てくる素の私。
「とりあえずすぐ取り掛かりますので。」
「とっととやれよ!お前の仕事だろ!!」
時間がいくらあっても足りないくらい忙しかった。お昼ご飯など、まともに食べた事がなかった。一分一秒無駄に出来なかったから。気付いたら朝噛んでいたガムが、夜になっても口の中に小さく残っていた。
残業代はしっかりついていたからまだよかったが、年頃の女の子で、遊びたい盛りなのにも関わらず、仕事尽くしだ。
お金はいらないから、時間を下さい。と、毎日祈るしかなかった。 8時半から17時半までの勤務なのに、8時半から0時半が定時のように、それでも早帰りという感覚。2時3時当たり前だった。
夜が明ける景色を見ながら帰宅すること。何回繰り返したか分からない。
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