~君が教えてくれるなら~




扉をあけるとさっき微かに感じた風が体全体を通り抜けていく。




ふと見ると目の前に1人の男子生徒がいた。




げっ。先約いた~。



その生徒はこちらに振り向きもせずあぐらをかいてなにかをしている。





なにしてるんだろ、あの人。





興味本位でちょっとずつ近づいてみた。





楽器弾いてる!



ギター…じゃなくてベースだ!!!





アンプに繋がれていないベースはベンベンッと鈍い音をたてていた。






何を演奏してるかは分からないけど。




さっきからこの子が口ずさんでいる歌私知ってる!





何だか心地よい歌声に思わず耳を澄ましてしまった。




目を閉じて歌声を聞いているとサビに入る直前で歌声が途切れてしまう。



その代わり目をあけるとベースで弾き語りをしていた彼が私の方を見つめていた。




「あっ…」



「何?」



振り返ってこっちを見ている彼に動揺した。




「あ、ごめん。授業サボって屋上きたら先約がいて…そしたら知ってる曲だったから聞き入っちゃった。」


恐る恐る彼の顔色を伺うと思ったより怪しんだ様子はなく「そっか!」と納得していた。




< 6 / 51 >

この作品をシェア

pagetop