お嬢様と呼ばないで

そのつながりで美友の世話を頼まれたと話した。


「それに。俺、美友ちゃんが好きになったし」

「まあ?私も好きですよ。海棠先輩は優しいし、上品だし……」

「いいよ、もっと言って」

「セクシーだし、甘い声で。モテるんじゃないですか?」

「確かにバレンタインのチョコはトラック1台分だけど……本当に欲しいのは一つだよ」


こんな彼の軽口を美友は冗談で流し、廊下を歩いていた。

学校一のモテ男の海棠丈一郎がエスコートしている女の子は地味であるが、よく見ると気品あふれる清楚な女の子だったので、二人が歩く様子を学校中がドキドキしながらひっそりと見ていたのだった。


「あ。桜田さん」

「こんにちは!ふくよか先輩」

「おいおい。美友ちゃん?本当の名前は福岡」

「いいんだ。海棠。俺はふくよかで、な?」


学校一の悪者だった福岡はそういって美友を向いて頭をかいていた。



つづく
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