お嬢様と呼ばないで
こうして畳の中心の疾風は、うらら学園の荒くれ者達と戦い出した。
「行け!あのチビを倒せ」
うおーとかかってきた先輩部員を疾風は嘲笑うかのように交わしていた。
「くそ?捕まえられない?」
「おい。みんなで行くぞ!」
しかし。ダンスを踊るように疾風はするりと交わしていたので見ていた雨水は山吹にお前も行け!と言った。
「無理ですよ……部長こそ、お先にどうぞ!」
「なんだと?くそ!とりゃーーー」
雨水が疾風を捕まえそうとした途端、彼は疾風に触っていないのにそのまま投げ飛ばされてしまった。
「なんだ?今のは」
「……他の方も試しにどうぞ!はい、GO!」
山吹の誘いで部員達は何度も襲いかかるが、疾風は誰にも触れることなく相手を吹き飛ばしていった。
「怖え?何だこいつ、え!」
「わかってもらえましたか?部長さん」
一瞬の隙をついて疾風は雨水の背後に立ち腕に技をかけ彼の自由を奪っていた。
「うううう。お前は何者だ」
「俺が説明します。疾風のは空手じゃないんです」
日本古来からある古武道で、今のは合気道と言い、氣で相手を吹っ飛ばす物だと山吹は説明した。
「色んな武道が融合しているんですけど、うらら学園には空手しかないんで、疾風はここに顔出したんですよ」
「挨拶が遅れてすいません。そういうわけで先輩をバカにしたわけじゃないんです」
腕を解いた疾風に雨水は咳き込み涙目で彼を見ていた。
「だかな。どうして生物部なんだ」
「大切なものがあるんです。守らなきゃならない大切なものが……」
その時、道場に声が響いた。
「あ。いた!疾風君。教室に忘れ物してたから私が取って来たよ」