お嬢様と呼ばないで
10 好きな事を
「疾風!そろそろ連れて帰ってくれ」
美友と日永の登場に、疾風はゆっくりと立ち上がった。
「ああ。今、行く」
「おい、待て、疾風と言ったな。もしかしてお前の守りたいのは、あれか」
「……」
「わかった。あの。君」
入部を断る理由は、彼女がいるからという新人第一位の答えを知っている雨水は美友に話しかけた。
「私ですか?」
「そう。あのさ彼に入部して欲しいんだけど、どうも君に遠慮しているようなんだ」
「まあ?そうなの疾風君」
「そ、それだけじゃないけど」
「……私に遠慮しないでって言ったでしょう!」
プンスカ怒り出した美友は、入部せよといい出した。
「でもさ。お前と帰る時間とか」
「そんな時は待ってます!ねえ?先生」
「はい。自習できますよ」
「でも」
「あのね?美友のせいで入らないっておかしいでしょう?それに皆さん、疾風君に期待してくれているのに……」
ここで部員達はうんうんとうなづき出した。
「それに、仮入部してから考えればいいじゃない。それでいいですよね?部長さん」
「はい!ぜひ!」
「決まったな?疾風」
「山吹さんまで?はあ」
こうして疾風の入部が決まったのだった。
美友、疾風、日永と三人は廊下を歩いていた。
「全く。勝手に決めやがって」
「そっちこそ!なんでも美友のせいにしないで」
「フッフ」
「ほら?先生も笑ってる。疾風君は好きな事をしてよ」
「好きなことって、俺はな。お前のそばに、ん?」
『……お知らせします。第3化学室の鍵を持っている人は至急返してください……繰り返します』