お嬢様と呼ばないで


「……面白れーもんだな。うん!最高に笑えるもんだよ」

「いいな。美友もそういう楽しみが欲しいな」


すると疾風は優しく頭をポンポンした。


「確かにさ。いろんな人がいるから揉め事は起こるさ。お前の周りは良い人ばかりだから、わかんねえかも知れねえけど」


「……」


「どうした?」


美友は長い髪を押さえながら彼に話し出した。


「そうよね。学校にはツッパリ番長さんとか、意地悪女王様がいるんだもんね」


「どこで仕入れたその情報」


「色々。そうか、良い人ばかりじゃないんだ……」


元気ない美友に彼はニコと微笑んだ。


「何を言っているんだよ。学校に通いたかったんだろう!最高に楽しいじゃねえか」



その笑顔に美友の顔はパッと明るくなった。


「学校に通わないとそれだってわかんないぞ」


「そうよね。うん」


昨年の今頃はベッドの上だった彼女は、自分の影をじっとみていた。
そんな美友に疾風は肩をぶつけた。


「……あーあ、俺、腹が空いた!」
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