……秘密があります



 それ以上は無粋だと思ったらしい芳賀が上手く術を解いたので、羽未はきょとんと椅子に座っていた。

「はい、お疲れ、羽未ちゃん」
と芳賀がよく冷えたビールをくれる。

 木陰の川で冷やしていたらしい。

「あ、ありがとうございます」
と羽未がそれを両手で受け取ると、阿佐子が、

「そいつに礼なんて言わなくていいわよ。
 あんた、そいつのせいで、ペラペラ余計なことしゃべってたわよ」
と言ってくる。

 ひいっ。
 一体なにをっ?
とずっと持っていると凍傷になりそうなほど冷たいビールの缶を手に羽未は固まっていたが、芳賀は、

「いやいや。
 悪い酒でしゃべり出す程度のことだよ」
と笑っている。

 よく見れば、士郎と帯刀がなにやら揉めていた。
< 109 / 256 >

この作品をシェア

pagetop