……秘密があります
 帯刀は真剣な顔で言ってきた。

「お前は俺の部屋で二度指紋を消しているな」

 ミステリーですか、と思いながら羽未は反論もせず、ぐびりと特に呑みたくもないビールを飲んだ。

「お前がさっき言っていた白い花瓶。
 あれは割ってしまって、今はもうないんだ」

 ……そういえば、この間はなかったな、と気がついたが、やはり、なにもかもが酒のせいで、だるーい感じで、羽未は黙って帯刀を見上げていた。

「で、お前はその花瓶でなにをしようとしてたんだ」

 撲殺ですかね?
と酔った頭で思ってしまったが、確かそうではなかった。

 そうそう。
 記憶を失うほど殴りたいな~と思っただけだった。

 まあ、それで死なない保証はないが……。
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