……秘密があります
「食べない。
 そんなことより、お前は二度とも俺から逃亡したかったのか」

「課長がさちこさんなんて言うからじゃないですか」

「言ったのか」

「はい、寝言で」

「……最悪だな」
と自分で言う。

 はい。

 でも、お母様だと知って、余計に不安になった気がします、と羽未は思っていた。

 課長、もしや、マザコンだとか……?

 マザコンなんですか?
と口に出して言いそうになったが、柿ピーのピー程にもない理性でなんとか抑える。

「ともかく、二度も関係を持ったなんて、俺は責任をとるべきだと思う。
 いや、取りたい」

「妊娠もさせてないのに責任を取りたいとか面白い奴だな」
という声が近くでした。

 振り向くと、意外に近くで呑んでいた芳賀が石に腰掛け、面白そうにこちらを眺めている。

「やっぱり鬼畜だわ……」
と呟きながら、阿佐子がその後ろを通り過ぎていった。



< 115 / 256 >

この作品をシェア

pagetop