……秘密があります
 そうですか、と言って羽未はみんなのところに行き、何故か和花が爪楊枝にさしてくれたササミをもらってきた。

 ど真ん中に細い爪楊枝がささっているだけなので、ふるふる震えて、ものすごく不安定なそれを帯刀に差し出し、

「半分どうですか」
と言ってみたのだが、やはり、

「いらない」
と帯刀は言う。

 そうですか、と思いながら、置きっぱなしなので、ちょっと乾いているが、タレがよく染みて美味しいササミを齧り、もう炭酸が消え失せているビールを呑んだ。

 ふうーと息を吐いて、またキラキラしている川を眺めていると、また帯刀が言ってきた。

「で、『何故か一回公園の石垣に上がって』、そのおじさんはどうした?」

「……あの~、なんでそんなに自転車のおじさんのことが気になるんですか?」
と訊いたのだが、帯刀は、

「俺が気になってるのはおじさんじゃない。
 ……ただ知りたいんだ」
と言って、羽未を見つめてくる。
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