……秘密があります
 帯刀は羽未を見つめ、しみじみと言ってきた。

「夢だということにして逃げようと思ったわけじゃない。
 目が覚めたら、あまりに見事に痕跡が消えてたので、夢かと思っただけだ。

 そして、思ったんだ。

 俺は夢に見るほどお前が好きだったのかと――」

 おや、どうしたことでしょう、と羽未は思う。

 私が指紋を消して逃げた話がなんだかいい話になりつつありますよ、と赤くなった。

「だから、そもそもお前がそんなときに、さちこさんとか母親の名前を呼ばなきゃよかった話だろ?」

「そうですよ。
 それで私は泣きながら、夢に見えるよう細工をして帰ったんじゃないですか」

「可哀想にな、羽未」
と士郎は頭を撫でてくれたが、

「待て」
と帯刀に言われる。
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