……秘密があります
「ありがとうございますー」
と叫び返し、帯刀は立ち上がる。

 うっ。
 卵がざくーっ、ばりーっで二人きりの時間が終わってしまった、とボロボロの連絡帳を手に羽未が固まっていると、ドアのところまで行った帯刀が振り返らずに呼んできた。

「羽未」

「はっ、はいっ」
と羽未は慌てて腰を浮かして返事をする。

「あの夜、さちこさんと呼んだのは……」

 はっ、はいっ、と身構えた羽未は今度は心の中だけで返事した。

「お前を親に紹介する夢を見てたんだ」
と早口に言ったあと、帯刀は、

「おやすみ」
と言い、ドアを閉めた。

 帯刀が階段を下りていく音を聞きながらフリーズしていた羽未だが、母親が帯刀に別れの挨拶をする声で正気に返る。

 ドアを開け、慌てて駆け下りた。

「げ、玄関までお送りしますーっ」

 そう言って。





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