……秘密があります
 あーっ!

 あーっ!

 あーっ!
と交互に叫びながら、跳ぶ蜘蛛が帯刀の手首に乗る寸前で、窓から振るい落とした。

 羽未が慌てて窓を閉める。

 帯刀は蜘蛛に侵《おか》されていた新聞をゴミ箱に突っ込んだ。

 二人は気が抜けたように、ぼうっとする。

 おかしい……。

 ハリウッド映画とかだと、二人で危機を乗り越えたときには、感激して抱き合ったりキスしたり、吊り橋効果なはずなのに。

 現実には張り詰めていたものが、ぷつっと切れて、二人でただぼんやりとしてしまうだけだった。

 だが、頑張った俺を褒めて欲しい、と帯刀は思っていた。

 蜘蛛もどうにかしたし、結婚してくれてもいいんじゃないか?
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