……秘密があります
 


「お前、なんでいつもモヒートが多いんだ」

 残業が長引いたので、ほとんど呑めなかった帯刀が夜道を送ってくれながら訊いてくる。

「ああ、えっと……さっぱりしてて、あんまり酔わない気がして」
と言ったが、

「それは恐らく気のせいだ」
と言われてしまう。

 ……はい、そうですよね、と羽未は思った。

 明るい夜の街を歩いているうちに帯刀の口数が少なくなる。

 こちらを見ない帯刀を見上げ、何故黙っているのですか。

 顎クイまでした仲なのに、と思う。

 あんな風ではあったが、壁ドンも顎クイもやっぱりドキドキしたな。

 そんなことする奴居るのかと漫画なんかを見てて思っていたけど。

 実際されると、やっぱりときめくな。

 する相手にもよるだろうけど、と思ったとき、前を見たまま帯刀が言ってきた。

「知ってるか?
 送り狼って、もともとは妖怪なんだぞ」

 また訳のわからない知識を……と思いながら、羽未は酔っている勢いもあって訊いてみた。

「じゃあ、課長はその妖怪なんですか?」
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