……秘密があります
 



 この人、さっき、送り狼になろうかと言ってたような?
と思いながら、羽未(うみ)帯刀(たてわき)とともに、電車に乗り、駅から歩いて自宅に向かっていた。

 ……家に帰ってるよね? 私、
と思いながらも、帯刀から少し遅れて歩いていると、通り道にある繁華街で、若い男の酔っ払いたちが羽未にぶつかった。

「すみません~」
と言いながら、ヘラヘラ笑っている。

 すると、少し前を歩いていた帯刀が戻ってきて、羽未の肩に手をやると、ぐい、と自分の方に引き寄せた。

 男たちは帯刀を見て、あっ、すみませんっと早口に言って消えていった。

 そちらを睨みながら、帯刀が言う。

「わざとだ、羽未」

「えっ?
 そうなんですか?」

「以前、芳賀(はが)がやっていたから間違いない」

 それは間違いなさそうですね~……。

「行くぞ」
と言って、帯刀はすぐに手を離したが。

 羽未は、
 今の、壁ドンより顎クイよりときめきました、課長、
と赤くなる。

 だが、今、確実に自宅に送られていた。
< 164 / 256 >

この作品をシェア

pagetop