……秘密があります
 


「それで、ロールケーキで殺されかけたんですよね~」

 ロッカールームでポーチを棚から取りながら、羽未(うみ)は言った。

「あんたの話はさらっと聞いただけじゃ理解できないけど。
 わざわざ突っ込んで訊く価値あるのかなとも思っちゃう感じよね」
とロッカーの戸を閉めながら、栗原阿佐子(くりはら あさこ)は言ってくる。

 阿佐子は羽未の隣の席の先輩だ。

「で、なんでロールケーキで殺されるのよ」

 なんだかんだ言いながら、気になったらしく、阿佐子は結局、そう訊いてきた。

「いやいや、美味しいロールケーキのお店があるんですよ、うちの近く。
 それで、大学のとき……

 あれっ? もう二分前ですよ、戻りましょうか」
と壁の時計を見ながら言って、キレられる。

「もうっ。
 どうでもいい話だってわかってるのに気になるじゃないのよっ」

 いやいや、なんで訊く前から、どうでもいいってわかるんですか、と苦笑いしながら、ロッカールームを出ようとしたとき、阿佐子が言ってきた。

「そうそう。
 どうでもいい話と言えば、春成課長のクビに鈴はつけられたの?」

 ぱた、と羽未はポーチを床に落としていた。
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