……秘密があります
 そういえば……。

「そうよねー。
 イケメンであの若さで課長で。

 おうちもいいらしいのに、あんな無愛想じゃ誰も近寄れないわよね」
とあのとき言っていたのは、阿佐子(あさこ)さんだったかも。

 ヤバイ。
 言い出しっぺの楡崎(にれざき)さんに記憶がないから、みんなにもないんだろうと思ってた、と羽未(うみ)は青くなる。

「いや~、つけられるわけがないです~」
と慌てて笑ってごまかすと、

「ああ、そう。
 まあ、そうかもね」
とあっさり阿佐子は納得してしまった。

 それはそれで寂しいな……。

 はは、とごまかし笑いの余韻を引きずりながら羽未は思っていた。

 ……そうですよね。
 私と課長なんて釣り合うわけもないですもんね。

 ちょっともとあそばれて終わりの関係なんですよ、ええ……。

 自分で帯刀(たてわき)の側から逃げ出したくせにに、羽未はちょっとしょんぼりしながら、阿佐子の後について行った。



< 23 / 256 >

この作品をシェア

pagetop