……秘密があります
 よく見れば、後ろの方に普通に座っていた。

 ……シロさん。

 気づけば、和花たちが士郎の側に移動している。

 やさしく慰めようとしているようにも、今だっ、とばかりに落としにかかっているようにも見える。

 式場のスタッフがホッとしたように左右から扉を閉め、神父がなにごともなかったかのように、式を進行し始めた。

「新郎、春成帯刀(はるな たてわき)
 汝は此処に居る綾城羽未(あやき うみ)を妻とし――」

 帯刀より少し高い神父の声も白いチャペルによく響いた。

 チラ、と帯刀を見ると、帯刀も同時に、チラ、とこちらを見る。

 それだけでなんだか嬉しくて、羽未は白い薔薇を握り締め、ちょっと微笑んだ――。





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