君のキスが狂わせるから
「……そう思われるメッセージしたのは申し訳なかったけど。深瀬くんが何を求めてるのか、よくわからないよ」
『俺もあなたに何を求めてるのか、わからないです』
「何それ」
『電話じゃうまく説明できないな……よければ、明日の夜、会えませんか。行きつけの飲み屋予約しておきます』

(明日はヨガのレッスンだ。シャワー浴びて出ても、21時をすぎちゃうな)

 それを正直に伝えると、それでも構わないという。

『21時から待ってます。飲み屋の場所はこのラインに送っておきますけど、道が分からなかったら連絡ください』
「……わかった」

 ここまで押されて、断れるほど私も強くない。
 明日いろいろ詳しく聞くというのを約束して、通話を切った。

「ああ……っ、約束してしまった」

 望みのない恋をするつもりはない。
 私は立場をわきまえた、大人の女になりたいのだ。

 なのに、淡い好意を持っている相手からあんな風に誘われたら拒めない。

(全然心が整ってくれない)

「修行が足りないなあ」

 冷めかけたコーヒーを飲み干すと、私は深く深呼吸してシャワーの準備をした。

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