君のキスが狂わせるから

「抜けようってそそのかしたの、俺なのに。瑠璃さんってほんと…損な性格ですよね。俺、だから瑠璃さんを放っとけないし…好きなんです」
「……っ」

 生意気だなって少し思った。
 でも手が大きくて、やっぱり男の人なんだなとドキドキした。
 こんなに歳が離れているからこそ、深瀬くんの妙に大人びた部分と少し子どもっぽい部分が、絶妙な魅力として伝わってくる。
 こんなにも好きだと感じた相手は、今までになかった。

(そっか……私の本心ってそうだったんだな)

 急に以前付き合っていた彼が離れていった理由がわかり、私はそれを口にした。 

「私……元彼と別れた原因わからなかったんだけど。今、分かった気がする」
「どんな理由だったんですか」
「何も言わずに去ったのは、私が理解しようとしてなかったから。好きかどうかより、年齢とか何年付き合ったからとか、そういう外堀だけで結婚しようとしてた……」

 そうだ。
 彼は一度だけ「瑠璃は俺とどうして結婚したいの」と尋ねたことがあった。
 それに対して私はほとんど間髪入れずに「一緒に暮らしてるんだから当たり前でしょ」と言った気がする。

「元カレさんは、瑠璃さんにあなたじゃないとダメだからって言って欲しかったんでしょうね」
「……そうかもしれない。ううん、きっとそうだ」

(堅物の私には話しても無駄だと思ったんだ。だから黙って出て行った)

 謎が解けてスッキリしたような、あの時の自分の魅力のなさに失望したような、妙な感覚に包まれる。
 その私を大事そうに抱きしめ、深瀬くんは耳元で優しくささやいた。

「俺が忘れさせます。俺、どんなことがあってもあなたを置いて消えるなんてことしません。だからお願い……俺を信じて受け入れて」
「……どうして」

(私なの、こんな不完全な私を…そんなに思ってくれるの)

「好きな理由はたくさん話しましたよ。あとはこれから付き合っていく中で証明していくしかないんですけど」

 涙目になっている私にキスして、深瀬くんはふっと笑った。

「こう言ったら怒られるかもしれないですけど、瑠璃さんってそんなに年上に見えないです」
「っ、子どもっぽい?」
「うん。少しね」

 最初ここで二人で話したときは、深瀬くんから「俺って子どもっぽいですか?」って聞かれた気がするけれど。
 今は逆の立場になっている。

(そりゃ、ミホ先輩と比べたら私は子どもだよね)

 それが分かったら、なんだか笑えてしまった。

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