私立秀麗華美学園
「なんだお前。ああ、咲ちゃんの騎士ってお前か? 進が言ってたぞ。腹黒そうな、スカしたやつだってな」


途端、雄吾の拳が恐ろしいほど強く握られ、いくつも青筋が立った。


「……離れろ」

「はん、いきなり騎士気取りかよ」


雄吾は顔色を変えず、辺りを見回した。長年一緒にいるからだろうか、俺にはぴんときた。あいつにとって一番の武器になるものを探しているのだ。

俺は花壇の立て札を抜き、札の部分を取り外して、細長い木の棒となったそれを雄吾に手渡した。
雄吾は、俺にふっと笑いかけた。わかるわかる。あれはあいつなりのお礼なのだ。

そして雄吾は、棒を両手で握り、目の前にかざした。


「離れろ、と言ったはずだが」

「おう、何のつもりだ?」


笠井兄はこともなげに鼻で笑った。この状態の雄吾にその態度とは。後悔することを保証しよう。


「こういうつもりだ」


雄吾は冷ややかにそう言うと、木の棒を笠井兄めがけて振り下ろした。
さすが現役剣道部。こんな棒っきれでさえ雄吾が持つと、鋭利な日本刀であるかのような錯覚にとらわれる。

笠井兄からは、声にならない息を呑む音が聞こえた。


「……次は、当てる」


頼もしい声と共に、棒は笠井兄のひたい手前1cmのところで止められた。


「……やってくれるじゃねえか」

「さっさと自分たちの場所へ戻れ」

「なあ、雅樹、もう行こうぜ」


冷や汗を拭いつつもしっかりと雄吾をにらみつける笠井兄とは違い、取り巻きたちはガムを噛むのも忘れてそわそわし始めた。


「ちっ……」


笠井兄はやっと咲から手を離し、来た方向へ戻って行った。
< 104 / 603 >

この作品をシェア

pagetop