私立秀麗華美学園
「……はあー」


このやり取りの間、呼吸を止めていたかのように、咲は息を吐き出し、へなへなと座り込んだ。

気づくと周りの生徒や、渡り廊下から見物していた2年生から、勇敢な騎士にぱらぱらと拍手が送られていた。


「大丈夫?」


ゆうかは咲のもとへしゃがみ込むと、笠井兄に触れられたところを掃った。


「うん。なんか、怖かった。びっくりしたのもあったけど」

「あの人、ちょっと特別な扱いを受けているのよ。親の会社も会社だし、成績なんかでも文句のつけようがないんですって。先生たちも手をやいていることと思うわ」

「そうなのか……」


俺は呟き、初めて知った事実に驚いた。
あんなチャラけたやつが、この学園内に存在したとは。雄吾風に言えば、汚らわしい。

雄吾は木の棒を、ちゃんと元の通り立て札に直して地面に差してから、咲の方を向いた。


「咲」


片手を差し出し、咲を見つめる。


「雄吾、ありがとう」


姫は騎士に感謝を伝え、頼もしい手につかまって、立ち上がった。


「怪我はないな」


咲の顔に、満面の笑みが現れる。

雄吾は咲を、軽く抱き寄せ、ぽんと頭に手を置いて、わずかに微笑んだ。

俺から見たって、完璧に格好いい。俺が女なら、恐らく既に惚れ込んでいることだろう。
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