私立秀麗華美学園
「依頼の直接交渉かよ」

「そういうことだ! 頼む!」


現在、遂行中の依頼はゼロ。きっちり依頼料も持参していることだし、断る理由は特にないっちゃないのだけれども。


「依頼は原則メールより受け付けておりますが」

「別にいいだろー。キューピッドと仲良い俺の、特権だろー」

「要するに雄吾を通して依頼するより、俺に直接言った方が受理してもらえるだろうと」

「そういうこと」


まあ、暇だし受け付けてやるか。真二と馬渕の間でそういうことが起こっていたとは知らなかったが、仲良きことは美しきかな、とか、誰かが言ってたしな。


「しゃあねえなあ」


俺はもったいぶって、いかにも仕方なくおっけーしてやんよみたいな雰囲気で、真二の400円を受け取った。
こんな態度、雄吾やゆうか相手にとったって馬鹿にされるだけだが、そこは純粋な真二のこと。嬉しそーに顔を輝かせてガッツポーズを決めた。


「よーーかったああー! じゃ、頼んだからな。未樹の機嫌直ったら、またお礼とかするからー!」


浮かれた足取りで、真二は部屋を出て行った。
どうやら全幅の信頼を置かれてしまったらしい。


「馬渕未樹か……」


雄吾のシーツのしわをひっぱってのばしてから、自分のベッドに倒れ込んだ。

馬渕はキャラ的に、ゆうかとよく似ている。ゆうかと同じようなサディステックな発言も耳にする。真二は普段はどちらかといえば真面目なのだが、馬渕の前ではちょっとへたれる。というか、でれでれになる。腰ぬけになる。腑抜けになる。ちょっと言い過ぎた。

つまり、あの2人はどことなく俺たちに似ているのだ。セットとしてじゃなく、単体ごとにというか。俺たちと違っているのは、お互いがお互いを溺愛している点だ。

……あー、決定的な違いすぎた。似てるとか言うんじゃなかった。
いや別に悲しくなんかねえし。ゆうかが誰かを溺愛するなんて、到底想像できねえし。少なくともその相手が俺になることはないだろうから、そんな事態はいつまでも起こらないでいただきたいものだ。


あくびが出たので、そのままベッドに潜り込む。今頃はゆうかも夢の中だろう。
依頼のこと、とりあえずは雄吾に伝えないと……と、意識の奥底で考えながら、俺はすんなり眠りについた。



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