私立秀麗華美学園
階段を駆け降りてロビーに着くと、大きなガラス戸の向こうで、雨が降っているのが見えた。

梅雨明けって何なんだ。要するにこれは梅雨の雨じゃなく普通の雨ってことですかああそうですか!


こんな時に限ってコンシェルジュの姿はなかった。いつもなら寮の入り口にあるフロントで傘を借りられるのだが。わざわざ呼び出して出てくるのを待っていられるような心情ではない。半分ヤケだ。風邪でもなんでもひいてやる。俺はそのまま外へ飛び出した。

ばしゃばしゃと足元で水を跳ねあげながら、学園までの石畳の道を走る。
裾をまくりあげようかと思って視線を下へやると、まだ制服のままだったことに気がついた。

制服姿で濡れ鼠。でもそんなことはもうどうでもいい。
今、ゆうかに伝えに行く。



体育館の手前の道で前方に、花柄の傘とかばんを持った人間が見えた。
美しい歩き姿。いつも追いかけてきたあのシルエット。間違いない。どんなに遠くからだって間違えようがない。

ゆうかだ。


「――――っ!」


一瞬、立ち止まって言葉にならない声をもらしたが、また走り出す。
ゆうかが、随分遠くに見えていた。なかなか差が縮まらないように思った。そんなはずは、ないのに。


また立ち止まる。肩で大きく息をする。
雨足は強くなっていて、前髪からしずくが垂れた。石畳に落ちる無数の細い軌跡。

雨のカーテンの向こうにゆうかが消えてしまう前に、俺は口を開いた。


「ゆうかぁーーー!」
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