私立秀麗華美学園
「はあ、全く、あなたはまた一人で……ああ、お帰り、和人くん、ゆうか」


階段を真っ先におりて来て淳三郎氏に駆け寄ったのは、ゆうかの母親、花嶺りえさんだった。

ゆうかに似た……というか正しくはゆうかが似た、大きな瞳の整った顔立ち。背もすらりと高く動作が優雅で、存在感では淳三郎氏に引けを取らない女性だ。


「ごめんなさいねこの人がまた……二人が帰って来たと聞くや否や、お茶の席を立って一人で玄関まで猛進していくものだから」

「む……も、猛進とはなんだ。わたしは悠々と歩いてもって、愛娘と和人君を迎えに、だな……」

「嘘おっしゃい。そんなに急いで威圧しに行くこともないでしょうに。月城のお家でまで、和人くんを目の敵にすることはやめてくださいな」


彼女は花嶺家で唯一俺を庇ってくださるとてもありがたい存在である。
そして淳三郎氏に面と向かって意見し、説き伏せてしまうことにかけても唯一の人であろう。普段はその姿の数倍もの存在感を放つ彼も、りえさんの前ではまるで子供のようになってしまうのだ。


階段からは続けて、兄ちゃん、那美さん、そして俺の両親が急ぎ足で降りてくるところだった。


「ゆうかちゃああん!」


ゆうかの姿を一目見て大声で登場をかますアホ兄貴。
玄関に立ってゆうかに手を伸ばそうとした彼を、細い腕がつかんでぐいっと引き戻した。


「うおっ、那美、邪魔するな」

「お久しぶりー、和人くん、ゆうかちゃん。お邪魔させてもらってまあす」


じたじたと暴れる兄ちゃんをつかんだまま、にっこりと笑顔を見せる那美さん。

那美さんは兄ちゃんの婚約者で、兄ちゃんより4つ年下……だが、とてもそうは見えないほど男の扱いがうまい。正しくは月城和哉の扱いがうまい。俺は密かに姉ちゃんの手ほどきによるものなのではないかと推測している。

そしてすぐにフラフラと女の子に近寄ろうとする兄ちゃんを引っ張り続けてきたせいか、ふわふわの茶髪や白い肌、華奢な体つきに似合わず、かなりの怪力を持つ女子大生となってしまったようだ。


「和人ー!」


そして続けざま、今度は俺に向かって猛ダッシュしてくる大人が二人。

こちらも俺にとっての要注意人物である。


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