私立秀麗華美学園
「お帰りなさあーい! 元気にしてた?」

「久しぶりだなあ。ゆうかさんも。ほらほら、はやく上がりなさい。外は暑かっただろう?」


もちろんうちの両親である。毎度のことなのだが、いつものように二人ともべたべたべたべた俺を触ってきた。

背が低くやたらとくるくるした髪型で、フリルとレースが好きで、永遠の17歳☆――と称したいらしい、とても40代には見えない母さん。月城舞子。
そして、小柄でいつ見ても笑顔で、とにかく母さんのことが大好きなのが親父、月城宏典。

2人は、まあとにかく、お互いのことが大好きで、その愛の結晶である三人の子供――つまり兄ちゃん、姉ちゃん、俺、を行き過ぎたぐらい愛している。
特に母さんは寂しがり屋で、そのうえ世話焼きだ。でも天然だ。というか正直、二人ともわりとアホなんだと思う。


「お久しぶりです、宏典さん舞子さん。和哉さん、那美さんも。両親共々お邪魔させていただきます」

「ゆうかちゃんがお邪魔なわけないだろうー? どっちかっていうと、和人の方が邪魔だな! な、和人!」

「和哉さん、弟さんに向かってそれはありませんよね。それに、ゆうかちゃんからもう少し離れた方がいいと思いますわ」

「ぐわっ、腕を、腕を離せー!」

「和哉は本当にゆうかちゃん好きねえ」

「淳三郎さんの前でもお構いなしだなあ」


うふふふあははは笑ってる場合か。本当に大丈夫かうちの両親。
それに淳三郎氏はいつも、兄ちゃんのゆうかに対する言動には特にお咎めなしだ。今も腕組みをして、鋭い両目で明らかに俺だけを威嚇している。


……っていうか、今一番つっこむべきは、どう考えても。


「なんなんだ、それ……?」

「おお、これかあー!?」


正直一番答えて欲しくなかった兄ちゃんが返事をする。


「どう見ても浴衣だろ! 浴衣! 淳三郎さんがなあ、『夏は浴衣が基本だ!』とおっしゃって、家族全員分持ってきてくださったんだぞ」


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