私立秀麗華美学園


部屋のドアが開けられた音がした。

その音を聞いて、ベッドに寝そべって漫画を読んでいた咲は勢いよく起きあがりドアの方へ猛ダッシュした。


「ゆうかー!」


ドアの向こうに現れた、数週間ぶりに会う友達に躊躇なく抱きつく。


「おかえりっ」

「ただいま。久しぶりね」


行きよりも増えた荷物を部屋に運び入れてくれたコンシェルジュにお礼を言って、ゆうかは部屋に入った。


「お疲れー。どうやったぁ?」

「うん……。避暑地ではまあ、いつも通り、お父さんをやり過ごしながら適当にくつろいできただけなんだけど」


荷物の中から、大きなスイカを筆頭とする食料品を取り出しては冷蔵庫にしまいつつ、咲に返事をする。


「月城家では、そうね、いろいろあったかな。ばたばたしてたけど楽しかった。お父さんもそこまで鬱陶しくなかったし……」

「いろいろ、って?」


目をきらきらさせて続きを聞きたがる咲に、意味ありげに微笑んでゆうかは言い淀む。


「和人とって、ことやんな?」

「えっと、まあ、中身はそうだけど、和人とっていうよりは」


パタリと冷蔵庫の扉を閉め、ゆうかは少し考えた。咲はわくわくしながら黙って待つ。


「とりあえず、シャワー浴びてからにするわ。歩いてきたから、暑くって」

「……むー」


不満げな返事をしてゆうかを見送り、咲はばふんとソファーに倒れ込んだ。


「ゆうかたち、去年とは全然違うなあ……。2年になってからめっちゃいろいろあったし、和人も頑張ってるし。今度はどんな話かなあー」


にこにこというよりにやにやしながら両足をばたばたさせる。
やがてシャワーの音が聞こえてきて、ふと思いついた咲は元気よく立ち上がった。
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