私立秀麗華美学園
ぱたぱたと、部屋に備え付けであるがろくに使われていないキッチンに駆け込む。

小柄な咲はうんしょと脚立を運んで来て、上の棚を開いた。

取り出したのは数日前に雄吾からもらった紅茶の茶葉だ。ゆうかが紅茶を好むことを知っていたので、たまたま手に入ったそれを、咲も少し分けてもらったのだ。


お湯を沸かし、雄吾に教えられた通りにしてアセロラ色のお茶を淹れる。

あまり味の違いがわからない咲は、自分のグラスにはだばだばとてきとうにミルクを注いでティースプーンに山盛り1杯の砂糖を入れた。


「アイスティー?」


濡れた髪をタオルでくるみ、キャミソールとショートパンツを身に着けたゆうかがバスルームから出てきて言った。


「うん。雄吾にもらってんー!」


嬉しそうにグラスを運んでくると、ゆうかが座ったソファーの隣で布張りのスツールに腰掛ける。


ゆうかは頭のタオルをほどき、髪をはさむようにして水分を拭き取りながら口を開いた。


「食事会、うちの両親と、和音さん以外の月城家のみなさんと、それから那美さんも来てらっしゃったの」

「和人のお兄ちゃんの相手の人やんな」

「そう。食事会のあとはいつも通り、広間で個人的なお話をしたりしてたんだけどその時に、那美さんにお話しましょって言われてね……」


グラスを片手に身を乗り出して耳を傾ける咲に向かって、ゆうかはその夜のことを語り始めた。






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