私立秀麗華美学園
次の日の朝。

咲が着替えて部屋から出て朝食の席に向かおうとしたところ、前の方に羽美の姿があった。

廊下の角を曲がろうとしているところだったので、ぱたぱたと駆け寄る。


「羽美ちゃん!」


後ろから突然かけられた声に、羽美はびくりと細い肩を震わせた。


「おはよう!」


振り返り、咲の姿を認識して目を丸くする。
黒く、切れ長の瞳がぱっちりと開かれて、また、元の大きさに戻って……


「……あれ?」


元の表情に戻った羽美は、何も返事をしないまま前を向き、姿勢良く歩き去ってしまった。


「あれー? ええー……?」


その動作のあまりの自然さに、無視された、と咲が気づいた頃には、羽美の姿はもうリビングルームへの階段をおりきったところにあった。


「無視された……んやんなあ? 今の。な、なんで……?」


階段をおりつつぶつぶつと呟く。

もともと人見知りをあまりしないタイプの咲は、友達にもそういうタイプが多かった。
物静かなのは雄吾ぐらいと言ってもいいかもしれない。
が、その雄吾のことも正直まだ十分に理解できているとは思っていない。

つまり、羽美のような、しかも大分年下の子を相手に、どう接したらよいのだろうかと、今更ながら気を揉み始めていた。


「わからんけど……とりあえず、突撃?」


何やら不穏なことを最後に呟き、咲はリビングルームのドアを開けた。
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