私立秀麗華美学園
やつは、俺と全く同じポーズをとっていた。

つまり机に拳をついて前傾姿勢で、声にならない言葉と行き場を失った怒りを持て余している。

目が合った。


途端に「2人組」という言葉が浮かんでくる。
「歩み寄る」という言葉も一緒に。


確実に、さっきの出来事のせいで冷静な判断力を失っていたんだと思う。っていうか絶対そうだ。そうじゃないわけがない。

でなきゃ俺が、笠井と10秒間以上も目を合わせたままでいるわけがない。


向こうも俺と目を合わせたままでいた。何かが通じ合ったような感覚。たぶんやつも同じことを考えているのだ。
だけどどちらも、さすがに、という感じで動き出せずにいる。

しばらくアホみたいに固まっていたあと、俺たちは一旦目を逸らして別の方を向いた。どうしたものかと思っていると、図ったようなタイミングで榎木先生が言う。


「あえてまだあまり関わったことのない方と組んでみても、それはそれでよい取り組みになると思いますよ。
せっかくの機会ですからね。違った見方を持つ方と協力するというのも大切なことですし」


先生がそう言うんだもんな、うん、とか思いながら、前を向いたままでそろそろと後ろ向きに進んで行く。

ちょっと振り向いたら笠井がすぐ傍まで来ていた。なんなんだこの以心伝心っぷり。
気持ち悪いけどしょうがねえじゃん、だってもう他に組めるやつあんまいねえし、とかここでもまた目一杯の言い訳を浮かべてから、もう一度やつと視線を合わせる。


お互いにめちゃめちゃ喧嘩腰な表情だった。そんな顔して俺たちは言い合う。


「……おう」

「おう」

「どうする」

「別にいいんじゃねえか?」

「決定か?」

「お前が決めろよ」

「なんでだよ。嫌だよ」

「俺だって嫌だよ」

「じゃあせーのだ」

「なんだよそれ」

「せーの」

「「決定」」


こうして、ヨハンへの怒りをきっかけに、意地っ張りで見栄っ張りな俺たち2人は、初めての共同戦線を結んだのだった。













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