私立秀麗華美学園
―――――


「……は?」


そのまま眠り込んでいた俺が目を覚ました時、生徒の半分ぐらいは既に帰っていて、目の前では笠井がプリントの選別作業をしていた。


「やっと起きたか。調理担当責任者」


黒板には「浴衣喫茶」をおこなうにあたっての役職分けが並んでいて、調理パートのトップには、確かに月城とあった。


「調理担当責任者!? は!? 俺が!?」

「おう。調理パートのリーダーな。じゃこれ、読んどけ」


プリントを俺の机に残して立ち去ろうとする笠井の腕をひっつかむ。


「いや、なんで俺だよ、リーダーなんてやりたいやつ他にもいただろ」

「よく聞けぼけなす。後期の学祭はな、俺たち2年が運営の中心だから企画運営委員に入ってるやつはクラスの出し物にかまけてらんねえんだよ。
んでから11月っつったら部活の公式戦の多い時期だからな、所属してるやつは忙しくて……」

「これでも俺サッカー部に、ってかお前知ってんじゃねーかそういや!」

「へーそうだったっけ」


素知らぬ顔の笠井に食ってかかろうとするも、俺がサッカー部であることと公式戦前は練習が忙しいということは無関係であることを思い出し、文句の方向を転換した。


「大体料理できねー俺が調理パートってこと自体おかしいだろ」

「『浴衣喫茶』だ。出す物は和菓子中心に簡単な菓子。似合わねえけど得意なんだろ? ゆうかがお前を推したんだよ。文句あっか。
そもそも人手が足りねえ。うちの女子はほとんど企画運営委員なんだ」


なにしろ委員長が俺だからな、という最後の台詞は置き去りにゆうかを探すと、教室の後ろで他パートの長にプリントの配布と説明をしていた。


今のような状態ではあれ、いやあるからこそ、「ゆうかがお前を推したんだよ」の一言の破壊力たるや。

ご存知の通り、そんな説明をされて断れる俺ではない。


「しゃあねえな……」と言いながら振り返ると既に笠井はいなかったが、まあなんだ、とにかく、俺は実は人生で初めて「リーダー」という役職につくことになった。
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