私立秀麗華美学園
試作を終え下駄箱におりて行くとゆうかがいた。今日も委員会があったらしい。

雄吾と約束をしていたので、今度は試作の残りをゆうかにあげた。残りというにはきれいな形のものが4つ刺さった串をタッパーから取り出す。


「え、今食べるの?」

「固くなっちゃうから、できれば」


ハンカチと一緒に渡す。食べて、ゆうかは「うん、いいんじゃない?」と言った。


口元をハンカチで押さえる横顔を見ながら、本田の言葉を思った。

正直あれはいたかった。だって、同じようなことをゆうかも言っていたのだ。
4月か5月、薔薇園で、「姫だから」好きだとか言ってくるんでしょ? そんなことを言っていた。

本田には何か言い返してやりたかったけどできなかった。
歯痒かった。


「ねぇ、和人」

「ん?」


ゆうかは串に残っただんごのを見ながら言った。


「笠井に何か、い、言われたり、しなかった?」

「笠井に?」


俺が横を向いてもゆうかは一心にだんごを見つめていた。


「今日も試作に来てたけど、別に……ああ、馬鹿は死なないと治らないって言われたけど」

「それだけ? 何か、あの、休み時間のこととか」

「休み時間? ……ああ」


そう言えば席から離れた笠井にゆうかが何か言ってたなあ。さっぱりわからなくてあまり深く考えてなかったけど。
たぶん、笠井への警戒がここのとこ緩んでるせいもあった。


「そういえば何言ってたんだ?」

「……覚えてないの?」

「う、ん」

「そう」


ゆうかは、ほっとしたけど期待外れ、みたいな妙な表情をした。


「じゃ、忘れて。笠井にも何も言わないで」


何も言わないでって、何のことかもわかってないのに。


「うん」


最後にひとつ残っただんごがいつまでもそこにあるのを見て不安になったが、ゆうかの表情から張りつめた感じが消えなかったので、深追いはせず、うなずいた。
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