私立秀麗華美学園
14章:泣き寝入りは許しません
窓を流れる景色の中に着物を着た集団が見えて、そういえば今日は成人の日だったんだなと気が付いた。


「あっ、あれ、新成人ちゃう?」

「そっか。だから学校も休みだったのよね」


窓際のゆうかと咲も気付き、着物の柄や色の話を始める。目の前に座る雄吾は何やらレシピ本のようなものを真剣に読んでいた。


俺たち4人は、学園に帰る列車の中にいた。
夏の帰省ぶりの遠出だった。おとといの夕方に学園を出て、向かったのは俺んちの別荘。はるばる6時間の長旅の目的は、兄ちゃんと那美さんの結婚祝いのパーティーのためだった。

結婚式とも披露宴ともまた別の、公式ではない内輪だけの小規模な(とは言え招待客は100人規模だったが)パーティーで、友人や親戚を集めて行われた。
ゆうかはもちろん、丁度3連休だということで雄吾と咲も祝いの品を持って駆け付けてくれのだ。


「着物言うたら、那美さんは結婚式で着はるんかなあ」

「結局式は春休み頃まで延ばしたらしくて時間もあるし、和装も洋装もするんじゃねえかな。那美さんそういうの好きそう」

「そっかー両方かー。あたしも両方がいいなあ。ゆうかは?」

「さあ、和装は確実にさせられるだろうけどね」


パーティーにもちらりとお目見えしていた淳三郎氏を思い出して雄吾までもが苦笑する。地中海の街並み風の別荘へも浮世絵を土産にする彼の心意気は大したものだ。大した迷惑だ。


「雄吾はさっきから何読んでるの?」

「遅くなるが、今年はまだ作れていなかったのでな」


広げられた本のページを見ると、七草粥のレシピが載っていた。そういえば今年は食べてなかったな。


「七草なんて手に入るのか?」

「もはや、食堂のコックとは馴染みの仲だ」


食料品は食堂で買い付けることができる。ことあるごとに特異な注文をする男子生徒は、コックの中でも有名な存在だろう。


「七草といえば」


口角を上げてゆうかが俺の顔を覗き込む。七草と聞いた時から予想済みだったので、待ってましたとばかりに口を開く。


「セリ ナズナ、ゴキョウ ハコベラ ホトケノザ、スズナ スズシロ、これや七草」


春の七草の覚え方だ。春の……あ、そうか、秋の方聞かれたらやべーな……と内心焦っていたところに飛んできた攻撃は。


「よろしいー。じゃ、スズシロってなんのこと?」

「……参りました」


けらけらと笑うゆうか。内容どころか質問の時点で負けてました。
「大根」と雄吾がぼそりと呟く。どうやら答えらしい。

その雄吾の肩越しに、通路を歩いて行く金髪の頭が見えた。どこかで見たような色だな、と思ったけど、大して気には留めなかった。


列車は昼過ぎには学園に着くだろう。
金曜は始業式だけだったので、明日から、新学期の授業開始だ。










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