私立秀麗華美学園
16章:もしも代わりがきくならば
起こったことを正確に把握できないままベッドに入った次の日は、日曜日ではあったがゆうかは委員会の仕事があると事前に知らされていたため、部屋でおとなしく過ごしていた。

雄吾に事の顛末を話し驚かれよかったなと言われるといういつものくだりを済ませた次の日が、問題の月曜日だ。

雄吾に、はっきり自分で尋ねろと尻を叩かれていたため、おとといのあれは、一体どう受け取ったらいいのかという質問を投げかける心構えで、いつもの待ち合わせに臨んだのだったが。


「今日は、ゆうかはお休みです」


少し経って、雄吾と共に現れたのは咲だった。


「風邪引いちゃったみたいやねん。昨日は一日中学校おったんやけどな、帰ってきてからしんどそうで、今朝起きてこーへんかって」


4人のうち誰かが休む時には伝言がてら3人で登校するというのが慣例になっていたが、ゆうか抜きのこの3人での登校はかなり久しぶりな気がした。


「そっか……何か言ってた?」

「和人に、ごめんね、って。珍しいけど」


珍しい。それはとんでもなく珍しい。謝る道理もないので当然だが、気分によっては何らの正当な理由なく平気で俺を置いてけぼりに登校してしまうゆうかのこととはとても思えない。


「調子、どうだった?」

「ベッドから出てこんかったから詳しくはわからんけど、熱あるみたいやったなぁ。先に目は覚めとって、あたしが起きた頃には学校休むこと決めてたみたいやった」

「疲れが出たんだろう。働き詰めのようだったから」


雄吾も見解を示す。
やっぱり忙しかったんだろうなあ。そこへ来て一昨日のの予定があったから、少し無理をしていたのかもしれない。


「帰ってから、お見舞いに行く」

「うん。お粥でも作ってあげーな!」


ゆうかのいない教室で一日を過ごすという苦行を前に身体はストライキ寸前だったが、隣に立てるような人間を目指すとかほざいた手前そんなわけにもいかない。
授業もきっちり受けて、なんならゆうかの分のノートもとって、放課後会いに行こう。
そう、思っていた。
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