私立秀麗華美学園
こちらの意向がきちんと伝わっているからこそだろうが、幸ちゃんは最近、なんというか、実力行使に出てき始めている。
ああいうことへの免疫の無さは筒抜けのようで、っていうか普通に接してればわかるんだろうけど、女の子はずるいなあと思う。

ということを部屋に来ていた咲に話すと、うーんと大きく首を傾げられた。


「でも別にそれは、女の子に限ったことじゃないやん?」

「えー、そうかな……」

「あたしやって、雄吾に耳元で囁かれて腰砕けになるとか、そういうことあるし」

「………………はあ」

「ちょっと真面目に話してんねんけど!?」


幸ちゃんの存在を当然ながら咲はよく思っていなくて、もやもやぶつぶつ言っていたが、暴走しないように雄吾に念を押されているらしい。今のところ接触はしていないようだった。


「ゆうかの時なんか、笑顔ひとつで丸め込まれてたくせに」

「ちょっと過去形みたいに言わないでもらえますか」

「言っ……言ってへんし!」

「確かに今のは、そう言われても、仕方ないかもな?」

「っ!」


キッチンに立っていたはずの雄吾に耳元で言われ、咲は2㎝ぐらい飛び上がった。


「ちょっ、聞いてたん」

「何を?」


余裕の笑みで俺と咲にマグカップを差し出す雄吾。邪魔者どっかいけセンサーが反応しそうになったけど、まあいいや。こっちはこっちで慣れっこにもなってきた。


「雄吾はさー、声もいいんだよなー、不公平だなー」

「そんな風に思ったことはないが」

「低いからかなあ。いい声っていうか……まあでもやっぱり、雄吾やからなんやろけどなー」


雄吾だから、か。
ゆうかの声を思い出そうとしたら、咲ちゃんの声が重なってきた。ひそめるとよく似ているのだ。

切り替えて、電話をかけることにした。うなだれる前にできることを。


「例のストーカー電話?」

「うん」

「あたしもかけたろっかなー。病室に」


ごろんと横になる咲を尻目にボタンを押す。雄吾の「許しません」という視線に咲は服従する。


「あー、でもさー!」

「突然大声出すなっつーの、電話かけるんだって」

「でもさでもさ、幸ちゃんが和人のこと好きなんはほんまらしいねんからさ、そしたら、逆にやったればええやん」

「は?」

「和人が幸ちゃん翻弄したらええやん!」


それは……


………………ないだろ。






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