私立秀麗華美学園
やがて披露宴が始まった。新郎新婦は螺旋階段から下りて登場する。さっきはフリルに埋もれていた兄ちゃんも、堂々とした足取りで那美さんをエスコートする。
司会の挨拶、祝辞、ケーキ入刀、と披露宴は滞りなく進んで行った。結婚式に出席するのは初めてではないが今までで一番近しい人でもあるし、「結婚」が現実味を帯びてきた今、こんなに多くの人が若い2人を祝うために一堂に会しているということに、感じ入ってしまった。
華やかなシャンデリアから降り注ぐ光が、参加者全員の顔を輝かせていた。乾杯があって、料理を食べ始める。少しして、俺の隣にひとつ空いた席に、急いで着いた人間がいた。
「ああ、乾杯に間に合いませんでした。飛び入りのようですが失礼致します」
「みのる、お疲れ。わざわざみのるが手を煩わせることもないのに」
「私がお手伝いしたかったんですよ。和哉様にはお詫びの意味も込めまして」
この間の件で、ゆうかや真理子さんと共に計画に背いた行動を取ったことについて言っているのだと、すぐにわかった。みのるの到着に気づいたゆうかが、食事の手を止めて居ずまいを正す。
「稔さん、その節は本当にお世話になりました。その後大きな咎めもなかったとお聞きして、ほっとしました」
「とんでもございません。処遇については、お2人が一生懸命取り成してくださったおかげなのですから、こちらこそ厚く御礼を申し上げなければなりません」
「みのると真理子さんのおかげだって、本当に思ってる。何度でも言うけど、ありがとう」
電話がなければ、心が折れていたかもしれない。手紙がなければ、兄ちゃんに本当の決意は伝わらなかったかもしれない。もちろんそれだけではなく、十何年分の思いを込めて、今の俺たちがあるのは2人のおかげだ。
みのるが一緒に席について食事をとることはあまりないので、少し新鮮だった。地味なグレーのスーツを着て髪もほとんどいじっておらず目立たない風だが、みのるの物腰の柔らかさや若さの割に機転が利くところなどは、社交界でも一目置かれている。
一緒にいて褒められているところを目にすることもあれば、女性にこっそり名刺を渡されているところを見たこともある。そういう女性は決まって年上だということも知っている。
しかしみのるにそういう相手のかげを見たことは一度もない。離れて暮らすことになって長いので、俺にはわからないだけかもしれないが。
兄ちゃんと那美さんの生い立ちなどを記したスライドを眺めながら食事を進めていると、ゆうかの隣の咲がまた結婚式場の話を持ち出した。雄吾が応えて笑う。2人の間で交わされるそれは、もはや「夢」というより、「相談」だ。
咲の声が途切れたタイミングで、突然、みのるが俺とゆうかに笑顔を向けて言った。
「ところで、お2人はいつ籍をお入れになりますか?」
あまりに唐突な問いかけに俺は咳き込む。手を止めたゆうかからも、すぐには言葉が出て来ない。
司会の挨拶、祝辞、ケーキ入刀、と披露宴は滞りなく進んで行った。結婚式に出席するのは初めてではないが今までで一番近しい人でもあるし、「結婚」が現実味を帯びてきた今、こんなに多くの人が若い2人を祝うために一堂に会しているということに、感じ入ってしまった。
華やかなシャンデリアから降り注ぐ光が、参加者全員の顔を輝かせていた。乾杯があって、料理を食べ始める。少しして、俺の隣にひとつ空いた席に、急いで着いた人間がいた。
「ああ、乾杯に間に合いませんでした。飛び入りのようですが失礼致します」
「みのる、お疲れ。わざわざみのるが手を煩わせることもないのに」
「私がお手伝いしたかったんですよ。和哉様にはお詫びの意味も込めまして」
この間の件で、ゆうかや真理子さんと共に計画に背いた行動を取ったことについて言っているのだと、すぐにわかった。みのるの到着に気づいたゆうかが、食事の手を止めて居ずまいを正す。
「稔さん、その節は本当にお世話になりました。その後大きな咎めもなかったとお聞きして、ほっとしました」
「とんでもございません。処遇については、お2人が一生懸命取り成してくださったおかげなのですから、こちらこそ厚く御礼を申し上げなければなりません」
「みのると真理子さんのおかげだって、本当に思ってる。何度でも言うけど、ありがとう」
電話がなければ、心が折れていたかもしれない。手紙がなければ、兄ちゃんに本当の決意は伝わらなかったかもしれない。もちろんそれだけではなく、十何年分の思いを込めて、今の俺たちがあるのは2人のおかげだ。
みのるが一緒に席について食事をとることはあまりないので、少し新鮮だった。地味なグレーのスーツを着て髪もほとんどいじっておらず目立たない風だが、みのるの物腰の柔らかさや若さの割に機転が利くところなどは、社交界でも一目置かれている。
一緒にいて褒められているところを目にすることもあれば、女性にこっそり名刺を渡されているところを見たこともある。そういう女性は決まって年上だということも知っている。
しかしみのるにそういう相手のかげを見たことは一度もない。離れて暮らすことになって長いので、俺にはわからないだけかもしれないが。
兄ちゃんと那美さんの生い立ちなどを記したスライドを眺めながら食事を進めていると、ゆうかの隣の咲がまた結婚式場の話を持ち出した。雄吾が応えて笑う。2人の間で交わされるそれは、もはや「夢」というより、「相談」だ。
咲の声が途切れたタイミングで、突然、みのるが俺とゆうかに笑顔を向けて言った。
「ところで、お2人はいつ籍をお入れになりますか?」
あまりに唐突な問いかけに俺は咳き込む。手を止めたゆうかからも、すぐには言葉が出て来ない。