私立秀麗華美学園
「なんかー、ひたいのキスはー、友情と祝福のしるしだとかって」

「いやなんかそういうのあるらしいけど普通に言い訳だろ! ギリセーフみたいなとこ狙っただけだろ! いや全然セーフじゃねーし!」

「まあそうだろうねえ」

「なんでそんなにこにこして……嬉しそうなの……やっぱ信用すんじゃなかった……」

「和人が、妬くかなあと思って。大袈裟じゃない? ヨハンにもされたしさあ」

「ああ、頬の、あれは、公的に挨拶だったけどなんか違うし……ていうかあれも嫌だったけど……」

「あらそうなの」

「そうだよ……つーかそのせいで動揺して進とペア組むはめに……」

「そうだったっけー。いやでも大袈裟すぎでしょ。そんなに言うなら、はい」


ゆうかは、前髪を軽く寄せて目をつぶった。浮かべた頬笑みからは、やれるもんならやってみな、という挑発が感じられた。


「え"っ」

「どうぞ」

「……………………ぅ」


さらけ出された白く滑らかなひたいに、どきどきして変な声が出た。
けれど、そのあまりにも余裕な表情を、どうにか崩してみたくなる。

均等に並んだまつげが下向きの弧を描いているうちに。素早く、音を立てず、ひたいよりも頬よりも、もっと下。小悪魔を生み出す、その場所に、そっと。



「………………」

「………………」

「今…………」


何か返事をしようと思ったけど、駄目だった。ぱっちりと開かれた瞳から目をそらしてしまう。気を抜いたら「ごめんなさい」が出てきそうだ。でも、もう、そういうのはなし。


「……不意打ち、すぎ」

「やる時はやるんで」

「なめてたわ」


横目で反応をうかがっていると、ゆうかはやがて笑い出した。たぶん、俺の顔を見て。夕日はもう沈んでしまったので、それらしい言い訳もできなかった。
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