私立秀麗華美学園
昼休み、いつもより急いで昼飯をかきこみ、例の薔薇園へ1人で向かった。
もちろん教室からゆうかの姿はなくなっていた。


正式名称は『秀麗華美薔薇造園』というらしい、薔薇園と呼ばれるその場所は目が醒めるような鮮やかな色で覆われている。

赤ばかりでなく、黄色、オレンジ、ピンク、白、青と揃っていない色はないほどだ。


ちなみに、『青い薔薇』は今までの改良技術では作成が不可能だったらしく、『ブルーローズ』が不可能という意味を表す言葉にまでなったほどだったそうだが、なんやかんやまあ結局は金かけりゃどうにかなったらしくって、この学園には『ブルーローズ』までが揃っているのだ。


そしてそのローズの甘い香りが、付近にまで漂っている。
つまり愛の告白をするにはもってこいの場所ってわけ。


「急に、悪かったね」


憎たらしいヤローの声が聞こえた。
そっちの方が早かったか。


「ううん。いいのよ別に」


俺が身をかがめた場所から花壇1つ分あけた場所で、ゆうかと笠井は向かい合っていた。


「今日花嶺さんををお呼び立てしたのは、君の騎士、月城君についてなんだ」


俺かよ!
悪いけど本人、すぐ近くでよい耳フル稼働させてますから。


「か……和人のこと? 何か、失礼でも……」


……俺は飼い犬か。


「まさか、失礼なんて。時に、テスト明けの学園祭のことは知っているよね?」

「ええ、もちろん」


お気づきだとは思うが、女生徒と話しをする時、笠井の言葉遣いは異常だ。
どこの高校生が『時に』なんて言葉を会話表現で使うというのか。
もちろん、雄吾は除いて。


「学園祭の劇について……いささか月城君ともめたんだ」

「あら、今年は劇になったの?」

「そうなんだ。その主役を、僕に降りろと言うんだよ。君と主演できると楽しみにしていたというのに……」


言っておくが、劇とか決まるのはテスト明けだし、配役なんて持ってのほか。

相当ご自分の美貌を信じておられるよーで、楽しみにしていらっしゃるよーですが。

こいつの信心力はキリシタン並みと言っても過言ではない。

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