私立秀麗華美学園
『ゆうか』


俺がそこへ辿り着いた時、ゆうかはしゃがみ込んでいた。

おそるおそる近づいていくと、ゆうかは顔を上げた。
涙に濡れた顔を。


『和人……』


真っ赤な目を潤ませ、ゆうかは呟く。


『助けてよっ……』


言い残し、ゆうかは目にもとまらぬ速さで俺のもとを去って行った。


『ま、待てよ! ゆうか……ゆうか――!』


――――


「おはようございます」


俺が目を開くと、真上に雄吾の顔があった。


「何なんだそのポーズ。早く、着替えろよ」


雄吾が不審に思った俺のポーズ……俺はなぜか、ベッドの上で片手を思いっきり前(のつもりで上)に突き出していた。


なんだ。
夢だったのか。


「俺、何か叫んでたか?」

「ああ、聞き取れない言葉は発していた」

「そうっすか」

「早くしろって。遅れるぞ」


今日も、雄吾が作った朝食を食べて登校だ。食堂も開いてはいるのだが面倒なので。


「ゆうか……」


俺は心の中でその名前を繰り返した。
つもりが思いっきり口に出していた。


「咲に、聞くように頼んでおくか? やっぱり、気になるだろう」

「ああ……」


あまり気は進まないが、ここはお言葉に甘えることにした。
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