私立秀麗華美学園
我にかえった時、ゆうかをつかんだままの俺がいたのは、あの薔薇園だった。
昨日来た時とは違って、今はこの場所がこの世で1番美しい場所にさえ思える。


荒い息を整えていると、鐘の音が聞こえてきた。
始業の合図だ。


意を決し振り返ると、なぜかまったく息があがっていないゆうかがいた。
なぜかって、そりゃあ体力の問題なんだろうけども……けども……。


「何してくれてんのよ」


…………。

口を開くなりこのセリフ。
髪を整え、いかにも不満そうな表情を浮かべている。


「授業さぼったことなんて、1度もないのに」

「俺はゆうかとなら……」

「あたしは誰とだってよくないわよ。しかもテストをしあさってに控えて」


やばい。いつもの姫と家来モードに入ってしまった。
落ち着け俺。騎士の威厳をとりもど……いや、それはもともとないか。


「あの、さ」


言葉に詰まる。
やっぱ、いきなり涙のわけを聞くってのは、多少無理があるよな。


「……天気いいな!」

「……そうね」


ゆうかも俺の心情を察したのか、空も見ずに即答した。
そっと上を見てみると、空とかいう場所はすばらしく灰色に染まっていた。


「い、いやー、テストもあと2日かあ。やばいし全然勉強してね……」


何言ってんだ俺……。
ついつい定期テストのたびに口にしていた決まり文句を出してしまった。

だったらこの怒涛の2週間はなんだったんだよ!


「あははは、和人、頑張らなきゃ。今回はあんただけの問題じゃないんだからあ」


軽いノリで、遠まわしに文句を言われた。
やっぱ原因それかい。

あっきらかに、それはもうわかりやすく作り笑いを浮かべたゆうかの顔は正直怖い。


「そ、そうだよな、笠井のやろうも、薔薇園に呼び出してまで……」


はっ!
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