私立秀麗華美学園
いつもゆうかのこと褒めてたし、追いかけてたし、ついてまわってた。
だから俺の気持ちを信じてもらえていなかったと思うと、本当のところ結構ショックだった。


「俺は今までどんだけゆうかに……」

「本気に、聞こえなかった。いつもふざけてるのかと思ってたわ」


そう、言われて、考えてみれば、確かにそういうこともあったかもしれない。

俺が好きだって言えば、ゆうかは時には顔を赤くし、時にはあきれて首を振る、
その反応が見たいがために、言ったこともあったかもしれない。

ゆうかに好きだって言うことで、勝手に自分の中で納得して、ゆうかのことが好きだっていう自己満足のために言ったこともあったかもしれない。


「ごめん」

「また謝るの? もう、私といて、謝り癖がついちゃってる」

「今は、悪かったと思ったから、謝った」


好きだって言ってんのに、受け止めてくれない。
それでふてくされたこともあった。

そんな自分は本気で好きだと言ったことがあったのか。
ありったけの気持ち込めて、最高のシチュエーションで言って、それでも受け止めてもらえないなら、それから泣きでも怒りでもすればいい。

やれることもやらずに、かわいそうな俺とか言って、それこそ本物の被害妄想だ。


相手の目は涙目。
べた褒めの大告白直後。
息を吸い込めば薔薇の香り。
夕日はないが、朝の柔らかな日差しが俺を後押しする。

最高のシチュエーションじゃないなんて言わせない。


「ゆうか、俺……」

「ごめん。感動はしたし、和人のこと見直したのは確かだけど、だからって私が今まで言ってたことは嘘じゃないし、人の気持ちって一瞬で変わるのは相当難しいのよね」


あっけらかんとそう言った、涙の乾くスピードの早いお嬢さんは、「教室戻らなきゃね」と呟くと、たったかーと俺のもとを去っていった。
あとに残されたのは妙に甘ったるく感じられる薔薇の香りだけ。


……かわいそうな、俺……
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