私立秀麗華美学園
子分たちが未だに呆然としている中、中心のボスらしき奴は、やはり少し体裁を整えるのが早かった。
バイクから離れると、思いきり息を吸いこんで、叫んだのだ。


「てめえらなめとんかいい加減にしーよ!」


敷地中に、大地の唸るような轟音が響き渡った。それはそれは迫力のある叫び声だったのだが、なんというか、惜しかった。


「何、あの、イントネーション……」


咲が腹を押さえつつ言葉をもらした。
急な腹痛が襲ってきたわけではない。ゆうかをはじめ周りの人間と同じく、笑いをこらえているのである。

イントネーション。それだそれだ。あいつ発音おかしいって。
言葉の端々にも違和感が溢れている。街角インタビュー受ける大阪のおばちゃんじゃねえんだから。
子分たちにとっては慣れたことらしく、全員が口を押さえて後を向いていた。


「早くあいつ出せっって言ってんねん! おとなしく出さないかい!」


なるほど、いかつく見せたいが為に大阪弁を使っているというわけか。
出さないかい! て、笠井かい!

ついに咲がこらえきれず、爆発するように笑いだした。


「何わろてんじゃばか!」


そこはアホもしくはボケだろうと、純関東人の俺にだってわかる。
本人全く意識がないらしく、がなり散らすのを聞くたび憐れになってくる。

咲につられ、その場にいた人物が次々と吹き出し始めた。雄吾でさえ含み笑いだ。
空気が和やかになったかと思ったその時だ。


「あ、あいつじゃ! その顔は、覚えとんか!」


なるほど、言い方によっては田舎の鼻垂れ坊主にも聞こえる。
……なんてことはどうでもよくて。


「ああ、やっぱり。お久しぶり」


ボスが指していたのは、雄吾だった。
空気読めないのかこいつ。雄吾は、片手を上げて平然と応えた。


「ふざけた態度しよって……」


顔を真っ赤にしたおかしな関西弁のボスに同感。
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