私立秀麗華美学園
「ゆ、雄吾、どこで知り合うたん?」


なんとか笑いを飲み込みつつ、声を震わせて咲は問いかけた。


「この前、4人で出掛けた時。映画館でだ。あいつの態度がなってなかったから、常識を教えただけのつもりなんだが」

「態度って?」

「館内で、写真を撮っていたんだ」

「如月眞子が好きなんじゃ! それがどうしてん!」


ボスは顔を真っ赤にしていきりたっている。

説明しておくと、如月眞子とは、あの映画にちょい役で出ていた、俗に言う眼鏡っこアイドルである。

映画では確か、主人公が落ち込んでいる時に通りかかり、急に呪文を唱えだすという、明らかに不必要で、映画中最も残念な役をやっていた。

好きなアイドルが如月眞子とはかわいいボスだ。てっきり喫煙でもしていたのかと思ったが。


「……ボス、眞子様の大ファンなんすよ」


声のする方を見ると、革ジャンを着た子分の一人が、呆れ顔で話しだしていた。


「眞子様……」

「あ、どう呼ばないと怒るんすよ、ボス。喧嘩だけはべらぼうに強いんですけどね。眞子様のこととなると、見境が無くなるというか……」


俺は門越しに革ジャンと言葉を交わした。


「つくづくおもしろいやつだな」

「あの妙な言葉遣いも、眞子様の影響なんすよ。如月眞子の出身地が大阪らしくて」


なんということでしょう。
この学園に殴り込みに来たヤンキー集団のボスは、喧嘩の強い、妙な大阪弁を話す、アイドルヲタだったのです。


「つーか、お前は?」


俺は革ジャン野郎をじろじろと眺めながら言った。


「あ、自分、弓浜って言います」

「なんでちょっと口調丁寧なんだよ」

「ボスの護衛やってるからっすかね。癖です。ちなみに、フリーターです。言っとくと、ボスが今日ここに来た理由も、本当は眞子様のためなんすよ」
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