国中総てに虐げられてた私は未来の皇后?

解毒薬(レイファ)

「兄上、アンソニー殿は私の友人です。今現在の状況も後で説明致しますが今は、性急にこちらの薬を皆に与えて下さい。時間が無いのです。兄上お願い致します」


精悍なアンソニー皇子の前に、もう1人凛々しい中にも優しげな雰囲気の方が躍り出てきました。兄上とヴァント殿下とレオン様を見て訴えておりますからきっとこの方がミシェル様なのでしょうか?


「ミシェル、この毒物は他国の物質だ。お前が言う様に本当にそれが解毒薬なのかもしれないが、この者達を実験台にする訳にはいかない。性急に検査するゆえ今暫く待て」

「兄上……」

「宜しいですか。ヴァント殿下」


ラティラさんがすくっと立ち上がり、皆が注目する中ヴァント殿下に話かけた。ヴァント殿下は頷き、先を続ける様ラティラさんに言った。


「ありがとうございます、ヴァント殿下。その解毒薬をこちらにいますソフィア・ドラモンド侯爵令嬢が試飲されるそうです。何事も無ければ他の方々にも与える事ができますよね」

「ソフィアが……毒に!」


ミシェル様とソフィア嬢は婚約者だった筈……ミシェル様はラティラ様の側にいらっしゃるソフィア嬢の元へかけていった。そして跪き、心配そうな眼差しをソフィア嬢に向けてグッタリされている上半身をゆっくり抱き上げた。


「兄上……ソフィアに与えても宜しいでしょうか」


ヴァント殿下は視線はソフィア嬢に向けたまま意志の強い口調で問いかけた。


「ソフィア嬢はお前の婚約者だ……良いんだな」

「はい」

「それではアンソニー皇子。医師達に使用方法を教えていただけるか」

「はい、すぐに」


とても緊迫した雰囲気の中アンソニー皇子は医師達の元へ行き、胸元から小瓶を取り出し説明されている。

 その時私は凶々しい気配を強く感じ自然とそちらの方に視線が向かった。そこに居たのはお父様……アンソニー皇子を睨みつけている。ゆっくり足を動かしてアンソニー皇子の元へ近づいて行っている。そんなに離れてはいないからすぐにでも到達してしまう。


「アンソニー皇子!背後です!」


私が叫ぶと、お父様の顔面に白い物体が飛び掛かり、その直後ラティラさんがお父様の動きを封じています。ラティラさん……いつの間に近くに来たのでしょう?すばや過ぎます。それと同時に何人かの人々が動き出しましたが、ラティラさんの旦那様の指示の元、速やかに捕まって行きます。お二人共凄いですね……


 解毒薬も調合出来たようで、皆の見守る中ソフィア嬢に優しく声をかけながらミシェル様がゆっくりと口に流し込んで行きます。

 静まり返った室内に、コクンっと飲み込む音が響き渡りました。


「ソフィア」


暫くするとソフィア嬢のボルドーの瞳がゆっくり開きミシェル様と見つめ合い笑顔で


「ミシェル様」

「大丈夫か?」

「はい、大好き」

「私もだよ」


ミシェル様はソフィア嬢を抱き締めました。


 その後直ぐに、ヴァント殿下の指示の元毒に侵された方々に解毒薬の投与が始まりました。
< 24 / 25 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop