。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅵ《シリーズ最新巻♪》・*・。。*・。
料理が運ばれてきて、あたしたちはぎこちなく食事を摂りはじめた。
オムライスはメニュー表に載っていた、ふわふわ卵とはかけ離れてあちこちで固まっていたし、キョウスケのエビグラタンは、どこか冷凍感を思わせたが、
それでも手を休めることなく、機械的に口に運ぶ。
想像した通り、その味は全然旨くなかった。
向かい側でエビグラタンを食っていたキョウスケが、食事の最中、ちょっと世間話と言う感じで切り出した。
「お嬢、俺は一結と
ちゃんと向き合おうと、決めました」
あたしはキョウスケの言葉に目をまばたき、スプーンを持っていた手が完全に止まった。
「そ……そっか…てか、ちゃんとって?お前ら付き合ってたんじゃないの」
語尾が変な風に吊り上がる。
“ちゃんと”って所に重みを感じた。
今まで……キョウスケとイチの関係はあやふやだった。傍目には、キョウスケが優柔不断に見えるが、そうじゃなくて。
こいつが背負ってるもの、こいつが守らなければならないもの、こいつの気持ち、色んなものがごちゃまぜになって苦しんでたと思う。
でも、
キョウスケの気持ちが、いつもどこにあるのか分かっていた。
でも、その気持ちの在り処が、あたし以外の“誰か”になった。はっきりとそう確信した。
でもその“誰か”は
リコじゃない。
きゅっとスプーンを持つ手に力が入り、思わず俯いた。
「…一結とは……色んなことがありました」
うん。
でも……リコとも色んなこと、あったよねー――…?
「正直言うてムカつくことばっかりやけど、
でも“あの瞬間”
俺が守らな―――って思いまして」
リコとは…?リコと居るとき、お前は笑ってたよ。
何でムカついて怒ってることしかない人のこと好きになるの?
リコのことは?
リコは誰が守るの―――…?
それともあたしがまだ子供で、その感情が……気持ちが―――分からないだけ?
「リコさんには、ハッキリと言いました」
キョウスケが言い辛そうに言葉を濁し、あたしはスプーンに込めた力を益々強めた。
「……そっか…リコは何て?」
「『分かりました』言うてはりました。でも……俺は長い間、彼女を
苦しめた」
キョウスケが眉を寄せて長い睫を伏せる。