。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅵ《シリーズ最新巻♪》・*・。。*・。
「リコさんと―――、一緒に居るとき楽しかったです。
なんや、ほんまに自分が青春してるみたいで、ほんまはヤクザやのに
いっとき、そんな身分も忘れて……等身大の19歳になった気ぃがして
とても楽しかった」
だったら何で―――……?
と言う言葉はあたしの口から出なかった。
それがホンモノの“恋”ではないことが分かったから。
「まぁ…あれだ?
お前も本当の恋ってヤツを見つけたんだろうな。
青春、してんじゃん」
あたしは強引に笑うと、スプーンに込めていた力を抜き、食事を再開させた。
「お嬢…」
キョウスケが向かいの席であたしに何か言いたそうに口を開いたが、あたしは次の言葉を聞きたくなくて
「大丈夫だよ、リコにはフォロー入れとくから」
それでも
「お嬢」
再び呼ばれて、のろのろと顔を上げると
「リコさんに出逢わせてくれはって、おおきに」
キョウスケは長い睫を伏せて薄く笑う。でもその淡い笑みがちょっとだけ悲しみに揺らいでいた。
「礼を言われること何もしちゃいねぇよ」
ぶっきらぼうに言うのが精一杯。
あたしは親友のリコが大事で、でも同じだけキョウスケのことも大切で
二人には幸せになって欲しい、と願ってた。
でもこの瞬間、天秤に掛けるつもりはなかったけれど、キョウスケの幸せを願ったのは確か。
キッカケがどうであれ、経過でどうであれ、キョウスケの選択した道にあれこれ口出すことはできないし、したくない。