。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅵ《シリーズ最新巻♪》・*・。。*・。
「イチの件で思い出したけど、タイガのヤツほんまにイチのこと好きなんかな」
俺がほとんど独り言のように漏らした言葉を響輔はしっかりキャッチしたようだ。
「本当じゃないですか?“あの”一結が揺れるぐらい」
響輔は相変わらずの無表情で答える。
「うーん、俺にはそこんとこどうも信じられんて言うか」
「どうしてですか?タイガさんは自分の家を爆破したんですよ。それも片手もいく程の。
俺たちも一歩間違えば死ぬところだったんですよ」
響輔は掌を広げて「5」の数字を表した。
「まぁ確かに。あいつも認めたしな。でも、何か引っかかるって言うか…」
壁に張りつけられた鏡を見ると、俺の顏には眉間に皺が寄っていた。
鏡―――……かぁ。
「引っかかるって何がですか。ほとんど証拠が揃ってるんですよ。何を今更」響輔はひたすらにバスタブをごしごししながらこちらを見ることなくそっけなく言った。苛立っているのが分かった。
「まぁお前が言う“今更”な気がするんだけど、あいつ
―――嗤ったんだよ」
響輔がふいに顏を上げて意味が分からないと言う意味で目をまばたき
「わらった?」と聞いてきた。
「ああ、お前がイチのことでブチぎれたとき、確かに嗤ってた」
あれがどうにも引っかかる。