。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅵ《シリーズ最新巻♪》・*・。。*・。
女はシャンパングラスに口を付け、一飲み。白い喉が上下して、グラスを口から離したその時、グラスの淵に赤い口紅が移っていた。それすらも、どこか色気がある。
「お名前、窺っても?」
ふいに女がこちらを見て聞いてきて
「これは失礼。不躾な視線でしたか」
俺が微笑を浮かべると
「いいえ。イイ男から見られるのは気持ちの良いことだわ」
女は脚を組み替え、勝気に微笑んだまま
「ツシマ ココロ。
私の名前」
「龍崎 琢磨」
自分も名乗り、どちらからともなく握手を求め、手が絡み合った。
さらりとした、心地良い肌触り。指は細くて長いきれいな手だ。
「失礼ですが、ご職業は?」俺の方が先に聞いた。ツシマ ココロは…漢字を何と書くのだろう。まぁこの際どうでもいいが。
彼女は膝の上で頬杖を付きにっこり。目だけを上げ
「万屋」と挑発するように笑った。
「ほぉ、随分古い言い方をされる。まぁ私も同じようなものですが。“何でも屋”」俺が笑うと、彼女は口元に湛えた妖しいまでの魅惑的な唇を僅かに上げ、またも微笑。
「存じ上げてます。龍崎グループの会長さん」
「なる程。“同業者”だからですか。どうりで同じ匂いがしたと思った」
俺が笑うと、彼女はデッキチェアの背もたれに背を預け、軽く背をのけぞらせる。豊かな胸とくびれたウェストが一層際立った。
「一仕事終えたら急に暇になっちゃって」と、急に打ち解けた言葉遣いになって、俺も気を許して
「俺もだ」と同意しシャンパンを一飲み。
「で、ここでビジネスの相手を探しに?」と尋ねると
「まぁそんな所。でも見つかったわ。あなたとならいい“取引”ができそうだもの」
「ほぉ、それは興味深い」再びシャンパングラスに口を寄せると、女は頭上を見上げ
「ここってガラス張りだけど、紫外線強そうね。焼けちゃうわ」と顏をしかめ小ぶりのバッグから日焼け止めを取り出す。
「ね、背中塗ってくださらない?」と日焼け止めを手渡され、断る理由もなかった。俺は素直に受け取り、女が背中を向けロングカーデをするりと腕から引き抜いた。
透ける素材だったから身体のラインは充分に見てとれるが、それでも布一枚隔てるとこんなに印象が変わるものなのか、女の背中はこれまた色っぽい。
そして女の背……華奢な右肩からくっきりと浮き出たきれいな肩甲骨に掛けて高々と脚を掲げる『馬』のタトゥーが入っていたのを見て俺は目を細めた。
ツシマ……
ここに来てこの名前に妙な引っかかりを覚えた。