終わったはずの恋だった。
満生が掴んでいた方の手で同じように満生の腕を握られた。
秋の反対の手が、満生の頬に触れる。
キスなんて当然初めての満生はどうすることも出来ず、ただ目をぎゅっと閉じる。
近づく気配に息さえも押し殺した。
「……っ」
押し当てる、という表現がぴったりの初めてのキス。
触れ合いは一瞬なのに、離れたあとも余韻がいつまでも続く。
「……夜景に誘ったのは、デートのつもりだった」
「……うん?」
至近距離で声がするから満生は瞳を開けると、鼻と鼻が触れそうなほど近くに秋がいた。
「告白、するつもりだった。でもインフルになって、そのあとも予定が合わなくてズルズルしている間に、俺の留年が確定して、連絡、できなかった」
「告白、してくれるつもりだったんだ」
両想いだったんだ、と満生は一人微笑みが溢れる。
「……みっきは成績優秀枠なんだろ?だから、尚更、恥ずかしくて連絡できなかった」
確かに満生は成績優秀枠で研究室に配属され、院にも推薦があった。秋の中のプライドが二人の隔たりになっていたようだ。
「成績なんて関係ない。秋くんが留年したのって、テスト前のインフルエンザのせいでしょう?秋くんは悪くない」
このまま、二人の関係を終わらせるのが嫌だった。
一年前、秋からの連絡が途絶えた。終わったはずの恋だった。
でも、再会した。また会えた。
(だったら、ここから始めたい)
もう一度、あなたと恋がしたい。
そう願いを込めて、満生は自ら秋にキスをした。