お見合い夫婦の結婚事情~カタブツ副社長に独占欲全開で所望されています~
 また謎かけのようなことを言われて真帆は目をパチクリとさせた。
 "もしかして"とはどういう意味だ。アジフライなんてものはどちらかというと家庭料理だ。外よりも家で食べる方が多いに決まっている。
 そんなことを思いながらも真帆は頷いた。

「はい…、もちろんです。でも自分で作るとなかなかこんなにふっくらとはできませんよね」

 父がしがない研究職だったから、真帆が働き出すまでは入江家はけして豊かであったとは言えない生活だった。
 そんな中で安価で美味しいアジフライは母の小夜子の得意料理で、学校から帰ってドアをあけた時にふわりと揚げ物の良い匂いがすると飛び上がって喜んだものだ。
 大人になって夕食を小夜子と交代で作るようになってから、真帆は何度もチャレンジした。けれどやっぱり小夜子には敵わない。
 それを蓮に告げようとして真帆は思い留まった。社会人にもなって母にご飯を作ってもらっているのがなんだか恥ずかしく思った。
 一方で蓮は、"自分で作ると…"と呟いて難しい顔になってしまった。
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